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Meyer‐Optik Domiplan 50mm F2.8



昨年末、友人にある相談を受けました。
中古レンズを手に入れたのですが、レンズキャップが無いので、相談に乗ってほしいと。
大抵のレンズであれば、レンズメーカーの専用品でなくても、フィルター径さえあえば、市販の汎用品でもいける筈と、フィルター径を調べてみました。

すると、フィルター径は49mm。
つまり49mm径のネジのついたレンズキャップなら取り付く筈なので、そう連絡しました。

しかし、この相談を受けたレンズ、何だか気になるので調べてみました。

このレンズ、Domiplan 50mm F2.8は、そもそも、ドイツの光学メーカー Meyer-Optikの製品で、古い時代の東ドイツ製の一眼レフカメラの標準レンズとして使われていた模様。
Meyer-Optikは、あの有名なCarl Zeiss(カール・ツアイス)に次ぐ歴史を誇るドイツのレンズメーカー。
LEICAで有名なエルンスト・ライツ(Ernst Leitz)社よりも、古い歴史を持っています。
その後、第二次大戦後の混乱の後、東ドイツに編入されてしまい、レンズメーカーとして頑張っていたものの、社会主義国独特な国策の紆余曲折の結果、Meyer-OptikはPENTACON人民公社に取り込まれ、やがてそのPENTACON人民公社もドイツ統一後に消滅してしまいます。

Domiplan 50mm F2.8はそうしたレンズメーカーの製品なのでした。

登場時は、かなり手の込んだ加工が行われており、前枠には2段のフィルターネジが切られており、ゼブラ模様の加工がされた鏡筒はなかなか精悍なものでした。
しかし、相次ぐコストダウンに迫られた結果、前枠は金属製からプラスチック製に変わり、更にPENTACONに移管されてからは手間のかかるゼブラ模様の加工も省略され、単なる黒塗りレンズになってしまうなど、相次ぐコストダウンの結果、品質も良くなくなっていった様子。

このレンズについて、何よりびっくりしたのは、そのレンズ構成がトリプレットタイプだという事。
たった3枚のレンズで構成されたレンズなのです。

(トリプレットタイプの改良型として、ツアイス社が後ろ側の凸レンズを色消し用の合わせレンズとしたテッサータイプは、ツアイスの持つ特許が切れた後に、数多くのカメラメーカーが採用しました。各種の性能はこちらの方が優れているとされています。)

さて、現在のレンズで50mmクラスの標準レンズはその殆どが変形ガウスタイプなのですが、トリプレットの場合、各収差の補正は充分とは言えず、中央部の描写は素晴らしいものの、周辺の描写は決して良好とは言えず、場合によってはボケがバブル状になったり、グルグルボケが生じたりします。
このレンズの場合、周辺光量落ちもそこそこあるし、逆光特性は良くないし、開放F値は低い、寄れない…

今の間隔からしたら欠点だらけのレンズと言えるでしょう。
当時は設計精度の関係で、ある意味仕方ないと考えられていた様です。

しかしながら、見方を変えれば独特の風合いがあり、特徴的な描写をするレンズとも言えます。

現在はデジタルカメラの時代になり、そうした古いレンズの魅力に憑りつかれたファンたちが、こうしたレンズを珍重すると時代になってきてもいます。

人のことは言えないのですが、minolta製の変ちくりんなレンズに憑りつかれている身としてはこうしたファンを笑う資格は無いなと思っています。

しかし、そうしたレンズに果たして嵌まって好いものかどうか…


ネット上に上がっている、幾つか作例を見たのですが、確かに後ボケの強い光源による円形のボケはその周りの光が強くなって、まるで泡の様に見えます。

これは面白い!

調べてみると1万円程度までで手に入れる事が出来そうです。

そこでヤフオクで調べて、安価だったものを落札しました。

入札して、あっけなく落札。

良かった!と思いながら、説明書きを読み直して…固まりました。

入札したその個体、安いなと思ったら、エキザクタマウントなのでした。

いろいろ調べていて、ネット上の説明から当時の一眼レフ用レンズの標準マウントと言ってもいいM42(プラクチカ)マウントしかないとばかり思っていたもんですから、すっかり足元をすくわれた気分。

既に落札してしまったもんだから、返品するわけにも行かず…

自業自得ですな…

気を取り直して、エキザクタ→SONY Eマウント用のマウントアダプターを手に入れ、試写してみました。

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α7Ⅱにマウントアダプターを付けてカメラに装着したところ



確かにバブルボケは見られるものの、いかんせん標準50mmという画角ではその効果は小さい。
友人の持っている4/3カメラならば、35mm版換算100mm相当なので調度好い具合だと思うのですが…

寄れば行けるのじゃないかと思ったのですが、最短撮影距離0.75mと寄れないので、考えた末、マクロチューブを手に入れてテストしてみました。
これは好い感じ。
条件によってはフレアやゴーストが発生し、これもなかなか味わい深いものがあります。

何とか味わいのある写真が撮れそうです。

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そのままで撮影 最短撮影距離が0.75mとあまり寄れないので、バブルボケの発生もおとなしめ

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マクロチューブ10mm装着 バブルボケは派手になりますが、条件によってはゴーストが出ます。

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バブルボケのみにしたところ

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逆光気味にしたら虹色のフレアが出ました。



しかし、こうなってみるとやはり少し焦点距離の長いレンズが欲しい。

調べてみると、Domiplanには同じくトリプレットのTrioplan 100mm F2.8という姉妹レンズがあった様で、これは大いに期待…

しかも最近復活した!?

大いに期待して調べてみたところ…


Trioplanのバブルボケを味わえる様にと、最近その設計を活かして出資者を募り復活させたそうです。

興味をそそられます。

その記事はこちら

しかし、その価格は軽く10万円を超える…

これは…

魅力的なレンズだとは思いますが、さすがにかなり冒険的なレンズだと思えますし、何よりこれだけ高価だと、欲しいけど、さすがに手が出ません。

諦めざるを得ないかなぁ…

調べるうち、Meyer-Optik/PENTACONには他にも魅力的なレンズが幾つかあるのが判りました。
Trioplanが手に入らないならと、後継メーカーのPENTACONブランドのものですが、好きな画角のOrestor135mmF2.8、Orestegor200mmF4と続けざまに、それらをオークションで落札してしまいました。
いずれも数千円程度なので、まあ楽しめるかな…とばかりに。

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勢いに乗って入手してしまったレンズたち
左から Meyer‐Optik Domiplan 50mm F2.8
PENTACON AV 80mm F2.8 (後述)
PENTACON ELECTRIC 135mm F2.8
PENTACON 200mm F4



しかし、やはりTrioplanのバブルボケは魅力的…

ヤフオクに登場しているTrioplanは12万円とか高価だけど、落札されています。
新製Trioplanはそれ以上に高価なので、とても手が出せません。
使ってみたいけどなぁ…

諦めるしかないのかなぁ…

DomiplanでもAPS-C版とかフォーサーズなら魅力的な画角になるだけに、少々悔しく思えてきました。

しかし、いろいろ調べていると、実に興味深い情報に行き着きました。

Meyer-Optikの製造したトリプレットレンズには、カメラ用以外にもDiaplanというプロジェクター用のものがあり、60mmF2.8、80mmF2.8、100mmF2.8、100mmF3.5、140mmF3.5、150mmF2.8などがラインアップされていたそうです。
そして、それらのレンズはPENTACONに統合された後も、引き継がれ生産されていました。
コーティングの関係もあって、レンズの発色特性はTrioplanと少し異なるらしいのですが、これらのレンズを手に入れれば、カメラレンズに改造して使える…

そして、そうした改造をしている人のサイトも見つけて興味をそそられました。

これなら、高くても数万円までで手に入りそうです。

そんな中、ヤフオクにPENTACON AV 80mmF2.8の改造レンズが出品されたのです。

価格は?

予算内!!

早速入札し、無事に手に入れました。

マクロチューブ用のヘリコイドを改造したものにプロジェクター用のレンズヘッドを取り付けただけの構造なので、絞りは無いのですが、元々絞り開放で撮影するので全く問題なし。

しかも、カメラ用レンズよりもマクロ域まで寄れますから、対象物を上手く選べば、そこそこ楽しい写真が撮れそうです。

M42マウントなので、マウントアダプターを介せば、α7/α7Ⅱで使える!

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左 Domiplan 50mm F2.8
右 PENTACON AV 80mm F2.8

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時間帯は異なるものの、同じ場所で撮影
上は Domiplan 50mm F2.8
下は PENTACON AV 80mm F2.8
前景に対して後ろのバブルボケの出方の差が判ると思います。
Domiplanの方は、画角の関係でややバブルボケが潰れてしまい、いわゆるグルグルボケになってしまっています。

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全て PENTACON AV 80mm F2.8 での撮影
使い方次第でかなり楽しい写真が撮れそうです。


ところがこの個体少々問題ありで、オーバーピンフ(無限遠より少しヘリコイドが回せる)になっているとの事でしたが、僕の用意したマウントアダプター(M42→minolta MDマウント用)ではうまく行かず、また、レンズの中に小さな塵が入っており、バブルボケに若干気になる影が出るので、出品者からの提案もあり(これはちゃんと無限遠が出ないからだったのですが)、交換を考え始めました。
ところが、その矢先、女房がこのレンズを引っ掛けて、落っことしてしまい、レンズの前枠の部分が割れてしまいました。
何とか飛び散ったパーツを掻き集め、接着剤で概ね元通りの姿にはしたのですが、そのまま返品する訳にはいかなくなってしまいました。

まあね、僕の置いていた場所が悪かったのもあるんですが、彼女の落ち込み様と言ったら…
正直申し訳なかったなぁ…
あんな場所に置いてなければ、引っ掛けなかったかも知れないし…
妻よ、ごめんね。
m(_ _)m

結局、代わりのを買っても好いよ。とのお言葉に甘え、ヤフオク出品者に相談し、散々悩んだ結果、幾つか候補はあったものの、運良くPENTACON AV 100mm F2.8が入荷したというので、入手する事にしました。

高価なTrioplanではないし、絞りもついていないのだけど、元々絞り開放で楽しむつもりのレンズです。
問題なし。

これもマクロヘリコイドを組み合わせた改造品なので、本来のカメラ用レンズよりも寄れますから、このレンズの不思議な描写を活かすにはもってこいです。

バブルボケも概ね想像していた感じですし、かなり活躍してくれそうです。

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左より Meyer‐Optik Domiplan 50mm F2.8
PENTACON AV 80mm F2.8 
PENTACON AV 100mm F2.8

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PENTACON AV 80mm F2.8 と PENTACON AV 100mm F2.8 ではかなり大きさも重さも異なります。

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カメラに取り付けてみるとその差は歴然…



えっ?

Domiplanは?

折角なので、エキザクタマウントからミノルタSRマウントに改造してしまい、他のレンズとの共用出来る様にしようと思っています。
また、カメラとレンズの間に入れるマウントアダプターも改造して、間にマクロヘリコイドを入れたものを製作して、より寄れる様にしようと計画中。

そもそも、Domiplan 50mm F2.8にしても、Trioplan 100mm F2.8にしても、本来のレンズの使い方からすれば、バブルボケする事もあって、綺麗な描写の望める無限遠から最短撮影距離は破綻しない様に長めにして、さらにF値を上げ過ぎない様にして無理の無い描写をする様にしてあるのだと思います。

で、あれば、これらのレンズの独特の描写の特徴を最大限に活かすには、最短撮影距離を稼いで前景にピントを合わせ、後ボケの点光源を効果的にバブルボケにしてやるのが良さそうとの判断からです。
果てさて、その改造がうまく行きますかどうか…

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左のM42マクロヘリコイドと右の不要になったMD/MAマウントアダプターを改造したものでマクロ用マウントアダプターを作るつもり…(笑)

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MD/MAマウントアダプターの改造中…
どうなる事やら…


幾つか部品を改造しつつ、手配品が到着するのを楽しみにしています。


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【2017/01/31 22:54】 | オールドレンズ
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